ママと子供の予防歯科
「自分は歯でいろいろと苦労をしてきたので、子供には同じ苦労をさせたくないんです。」診療をしている中で、お母さまからこのようなお話をお聞きすることがあります。
あるデータでは、シニア世代が「後悔していること」の1位は「歯の定期検診を受ければよかった」だったとのこと。歯が丈夫なうちはなかなか気が付きませんが、歯が心身の健康にもたらす影響はとても大きいということが解ります。母親にとって、お子さまの健康は自分の健康以上に気になってしまうものですが、実は、歯に関しては、子さまを虫歯にしないためにはお母さま自身の歯をメンテナンスすることがとても重要だったりもします。
当院では、お子さまの健康のためにも、妊娠中からのデンタルケアを強くおススメしております。
母親に虫歯があると、子どもの虫歯発生率は3倍以上に
2歳児の虫歯の状況を調査したデータでは、お母さまに虫歯のないお子さまの場合、むし歯発生率が24.1%だったのに対し、お母さまに虫歯のあるお子さまのむし歯発生率は75.9%と、圧倒的に高いということが解っています。
虫歯の原因である虫歯菌(ミュータンス菌)は、生まれたばかりの赤ちゃんの口の中にはいません。虫歯菌は歯のような硬いところにしか住めないので、歯が生えていなければ生存出来ないのです。
ところが、歯が生え始める生後6ヶ月頃から感染が始まります。特に生後19ヵ月(1歳7ヶ月)から31ヵ月(2歳7ヶ月)までの時期に最も感染し、定着します。この時期は「感染の窓」と呼ばれ、注意が必要とされています。
虫歯菌は主に母親から感染しますが、近年のDNA解析技術の進歩により感染経路がより明らかになってきました。母親以外にも父親、親戚、保育所内での感染も報告されており、子供の育つ環境によって左右されることも明らかにされつつあります。
広島大学が36名の子供に対しておこなった研究では、子供から検出された菌のうち母親由来が51.4%、父親由来が31.4%、その他が18.6%という結果となりました。
乳歯が生えてくる時期で特に感染の危険が高まるのが、生後19ヵ月(1歳7ヶ月)から31ヵ月(2歳7ヶ月)までの「感染の窓」と呼ばれる時期です。この時期は最も注意が必要とされています。
この時期に家庭や歯科医院でしっかり感染予防ができれば、その後は虫歯になりにくくなります。
スウェーデン・イエテボリ大学での研究では、口の中に虫歯菌が大量にある母親(105CFU/ml以上)でも、歯科医院での虫歯治療、歯のクリーニング(PMTC)、フッ素塗布などの適切な処置をおこなうと、子供の虫歯菌の感染率が大幅に下がり、虫歯の有病者率も大幅に下がりました。
とはいうものの、いくら注意していても虫歯菌に感染してしまうケースはよくあるので、歯科医院でのフッ素塗布は検診も兼ね行っていきましょう。
お母さんのお腹の中で、赤ちゃんの歯は既にでき始めています。
赤ちゃんの歯は、お母さんのお腹の中にいる時に形成されています。そして、お母さんから歯の形成に必要な栄養をもらいながら再石灰化を進めていきます。
歯の栄養には、カルシウムだけでなく、タンパク質、リン、ビタミンA・C・Dといったの栄養素も必要です。
生まれてくる赤ちゃんのためにも、妊娠中は特に、必要な栄養素が不足しないように栄養バランスを考えた食事をとるようにしましょう。
妊娠中になりやすいお口のトラブル
このほど、ドイツとオランダの研究チームが「女性は子供の数が多いほど、抜ける歯も多い」という研究成果を明らかにしました。日本でも昔から「一子産むたび、歯を一本失う」と言われてきましたが、事実、妊娠中には歯や歯肉にトラブルが起きやすくなります。
その理由としては、つわりによって歯みがきがおろそかになりがちな事、食生活が乱れ間食が増えてしまいがちな事、そのほかホルモンの乱れや唾液量の低下など、幾つもの悪条件が重なっているからです。
当院は府中市の「妊婦歯科健康診査」を受けることができます。府中市にお住いの方は無料で検診を受けることができます。
また、治療が必要になった際もお体に配慮した治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
→当院のマタニティ歯科について
→府中市の妊婦歯科健康診査について
お子さまを虫歯にさせないためのポイント
当院には、毎回笑顔で来院されてくるお子さまがたくさんいます。それは、虫歯の治療ではなく予防のために通っているから。痛い思いや不快な思いをしなければ、お子さんだって歯医者嫌いにはならないのです。
お子さまを虫歯にしないためにはデンタルケアももちろん重要ですが、日々の生活習慣なども大きな影響を受けます。ここでは日常的に気を付けて欲しい習慣についてご紹介します。
スプーンや箸の共有をしない
虫歯菌(ミュータンス菌)は、唾液を介してお子さまに感染してしまいます。大人の唾液がお子さまのお口の中に移ることがないように、スプーンや箸は大人用のものと子供用のものをしっかりと分けましょう。
1歳7ヶ月から2歳7ヶ月の約1年間がもっとも虫歯菌(ミュータンス菌)が移りやすい時期と言われています。この期間は特に、お子さまに食べ物を与える時は、必ず子供用のもので。食器もなるべく子供専用のものを使用し、大人が使用したものは使わないようにしましょう。
また、熱いものを冷ます際にフーフー冷ましをしてしまうと、唾液が入ってしまう可能性がありますのでなるべくしないようにしましょう。
食事や間食は決まった時間に。ダラダラ食べをしない。
食事をするとお口の中は酸性に傾き、園さんによって少しずつ歯が溶け始めます。これを「脱灰(だっかい)」といいます。
脱灰は食後30分ほどは盛んに行われますが、唾液には酸を中和して脱灰した菌の表面を修復し、歯を強くする「再石灰化」の働きがありますので、この再石灰化がきちんと行われていれば、お食事によってお口の中が酸性になっても歯が溶かされて虫歯になることはありません。
しかし、ダラダラ食べ等で酸性の時間が長いと、再石灰化が間に合わず、歯に穴が開く虫歯に進行してしまいます。
また、頻繁に間食をしても再石灰化する前に脱灰が始まってしまうことになりますので、虫歯になりやすくなります。間食をする場合は食事との時間を開け、決まった時間に取るようにしましょう。
1歳半までは、哺乳ビンムシ歯に特に注意してください。
子どもを寝かしつける時に哺乳ビンにミルクやスポーツドリンク、乳酸菌飲料、ジュースなどを入れて飲ませると、そのままでは、寝ている時は唾液があまり出なくなりますので、乳歯の前歯がボロボロになってしまう様にムシ歯が出来ます。
これが哺乳ビンムシ歯です。
生後19~36ヶ月は最もムシ歯菌が住み着きやすい時期です。
生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には虫歯菌はいませんが、乳歯が生えてくると、生後19~36ヶ月の期間に虫歯菌が家族内、特にお母さんからの感染が多いことが解かってきました。
まず家族みんなが虫歯のない清潔な口を保つことが重要です。
虫歯菌(特にミュータンスレンサ球菌)は糖分を多く取ると他の細菌よりも歯に付着しやすくなりますので、この時期には特に甘いもの(飴や飲み物など)をだらだらと長い時間与えることはやめてください。
ミュータンスレンサ球菌が多く感染するとカリエスリスク(ムシ歯になる危険性)が高くなり、このままでは一生ムシ歯になりやすくなってしまいます。
6才臼歯の萠出前後のポイント
6歳臼歯は乳歯の奥に生えてくる最初の永久歯です。歯ブラシが届きにくく,歯垢(しこう:プラーク)がたまりやすくなります。
また耐酸性に劣り(石灰化がまだ十分できていないので)ムシ歯に非常になり易い時期です。
また形態的にも溝が深く複雑なので早くムシ歯になるのです。
6歳臼歯のむし歯予防には専門家の定期的(1年に3~4回)な管理と、家庭において確実な歯ブラシが必要です。また,フッ素入りの歯磨材剤を正しく使用してください。
カリエスリスクの高い場合や異常に歯の溝が深く複雑な場合には予防的に蓋をする処置(専門的用語:シーラント処置)をおすすめ致します。
奥歯が永久歯に生え変わる時期でのポイント
生えはじめの永久歯(幼弱永久歯)は石灰化が弱い(大人の歯に比べて約70%の硬さ)のでフッ素塗布の効果が大きいと考えられます。
歯並びのチェックもこの時期は受けてください。
永久歯が全部生えそろうのは12歳前後です。
乳歯を守る、予防歯科
当院では、大切なお子さまの歯を守るために、予防メンテナンスに力を入れています。
子どもの頃のデンタルケアの習慣は、大人になってからもずっと続くもの。子供の頃にしっかりとした習慣を身につけ、お口の中の良い状態を保って入れば、大人になってから歯で困ることもなくなりますし、ほとんど治療をしなくても済むようになるからです。
お子さまが楽しく歯医者に通えるようにするための様々な工夫、取り組みを行っておりますので、お気軽にご相談にいらしてください。